春だ。職場が変わった。新たな仕事の一環として、たんぽぽや鳥や空を眺めながら半日ぼんやり立っていたら、鈍い焦りを感じた。休憩を丸1時間取れた。なんでもない日に定時で上がれた。静かな環境。1日目はこんなに快適な職場があるのかよと感動したけど3日も経つと無味だ。

ここでの仕事は、死にそうな人にも困り果てた人にも傷ついた人にもかかわることはない。暴力を受けた人も金銭を搾取された人も放置された人も尊厳を奪われた人も、私が今までに関わってきた人たちは、たしかにいるのに、ここでの仕事には関係なくなった。この数年間、毎日誰かの困りごとを聞いてきた。解決できるものもできないものもあった。できないことのほうが多かった。愚痴や痛みや怒りや本音や嘘を、目の前にいる人たちの話を聞いてきた。休憩取れないのが当たり前、トラブルも当たり前、騒がしいのが当たり前の毎日だった。

もう疲れた嫌だ休みたいと弱音を吐いていたが、いざそこから離れてみると、どうやら私は寂しがっている。物足りないとさえ思っている。人の話を聞きたいと思っている。ないものねだりだ。

しばらくは休もう。単調な日々には慣れていくのだろう。仕事以外のやりたかったことに時間を使おう。私は何がしたかったんだっけ。たくさん眠りたかったはずなのにどうでもいいインターネットで時間を浪費している。